今年11月8日火曜日紀尾井小ホール。14回めの演奏会の開催がいよいよ決まりまし
た。
「顔(おもて)」というのを再演します。金子、長龍郎と栄吉の3人チームが第5回演
奏会のために書き下ろした曲です。
おのれの人間としての脆弱さ、才能の無さをかねて知る1人の人物・・ある女・・が
ひょんなことから
高まってしまった自分に対する社会的評価と、周囲の自分への過剰なまでの期待に、
翻弄されて思い悩む。
「わたしは平々凡々な女。満座の中でこんな大それた芸をするべき特別な者でない。
こんなことはやりたくない、こわい、恐ろしい、消えてしまいたい・・」
「いつかわたしの凡庸さが人々の落胆と嘲笑を買い、見捨てられ、ひどく自分は傷つ
くのじゃないか」
「そうなったら取り返しがつかない、死んだほうがまし。地味で安全で当たり障りな
く暮らすほうが、どれほどか好い」
自分の同一視する個人的な“私”がほんとうの自分なのか。
あるいは大衆に認知され、あてにされ、勝手に1人歩きしてしまっている社会的評価
のそれを“私”というべきなのか。
葛藤の末、彼女は社会的な「私」を生き抜く決心をする。
金子同人の、閑吟集から引いた「何せうぞ 一期は夢よ 夢の夢のゆめの世を ただ
狂へ」という最後の一節が、この曲のすべてを表現しています。
とある時代の、とある女のありきたりな物語かもしれませんし、
「出雲の阿国」と日本史に語られるその人のことだったかもしれません・・そこのと
ころは重要でないのです。
数ある創邦オリジナル作品中、随一の大編成です。ご期待ください。
清元 栄吉